ななたき
小坂町上向滝ノ下
最終更新:2024/07/11
- 来訪:文化4年(1807)8月
- 年齢:54歳
- 書名:十曲湖
- 形式:日記、図絵、和歌
- 詠歌:
- 春はさぞ おちも寄りなりなんいやたかき花の藤原はなのたきなみ
- ひしげる山のふぢはらいはがねにまつはりかゝる滝の白糸
8月20日
松尾某の案内により、七滝、麓の七滝明神を見る。
《十曲湖》
◆七滝神社 由緒
- 御祭神:大山祇命
- 祭日:5月17日
名前の通り、7段からなる落差60mの滝。麓には大蛇伝説を祀る七滝神社があり、周辺は公園として整備されている。
七滝の血濡れの大蛇伝説
七滝に伝わる大蛇の伝説。
秋田の民話を扱った刊行物にはほぼ必ず取り上げられており、比較的メジャーなお話だと言える。
⊞ 伝説・あらすじ
七滝村の高清水という集落に毘孫左衛門という高慢チキな大地主がいた。
所有する土地の広さは広く12kmは離れてる毛馬内まで広がっていたという。
男の慢心が引き起こした災難とは…。
イキり孫左衛門
七滝には神通力が通うと言い伝えられており、滝ツボに物を投げ捨てることは禁忌とされていた。
それを知りながら孫左衛門はある時、愚行に出る。
自分の土地から切り出した薪の束を一斉に滝壺にむかって投げ落としたのだ。
『神をも恐れぬ我が威光をさらに村のやつらに知らしめてくれよう』というわけだ。
滝の勢いに乗って次々と飲まれていく薪、七滝4段目『鍋倉(なべくら)』の滝壺に落ちると、
突如周囲はけたたましい轟音がこだました。
それは水中から、苦痛を喚くようなけたたましい怪鳥音であり、落下した薪はそのまま浮いてこなかった。
さしもの孫左衛門も顔が蒼くなり、そそくさとその場を後にしたのだった。
その晩、孫左衛門は夢を見た。
血まみれの大蛇
「禁忌を犯した不届きは貴様か…ッ!」
夢に現れたのは流血で赤く染まった大蛇だった。
その身、五丈(約16m)に及ぶ七滝の化身、七滝明神。
金縛りにあう孫左衛門に詰め寄り大蛇は生々しく述べた。
「滝は我が身に同じ、貴様は禁忌を破り流木を我が身に打ち付けた。
この罪、瀑布の落流より深きものと知るがいい…」
目を覚ました孫左衛門は背中に汗をびっしょりかいていた。
夢とは思えぬほどの血の生々しさは恐怖の念を芽生えさせていた。
「お、俺はとんでもない間違いをしてしまった。どうしよう、どうすればいい…?」
孫左衛門は己の慢心を心から悔いるのだった。
七滝神社
ほどなくして、七滝の傍らに一つの神社が建立された。
改心した孫左衛門が己が財を用いて贖罪を形にしたものだった。
彼の誠意は蛇神に届いたのか、以後孫左衛門は悪夢にうなされることはなくなった。
そのおかげか、彼のお家は分家まで後の代までつづくようになったという。
七滝神社の御神体にはとぐろを巻いた鉄の蛇が祭られている。
足腰の不自由な者が二晩この神社にこもり、滝の水を浴びるとたちどころに治るという。
七滝は近郷近在はもとより隣県からも参詣者が訪れ末永く親しまれるようになったということだ。
- 駐車場:あり(道の駅こさか)
- 案内板:あり
- トイレ:あり(道の駅こさか)
- 備考:県道2号線(樹海ライン)からも景観が良く、徒歩で気軽に滝まで向かえます。
◆参考文献
- 菅江真澄全集第四巻 日記Ⅳ/菅江真澄著 内田武志・宮本常一翻訳
- 菅江真澄遊覧記第4巻/菅江真澄 内田武志・宮本常一翻訳
- 国立国会図書館デジタルコレクション
- 真澄紀行/菅江真澄資料センター
- 秋田魁新報社編 秋田民話集 一二〇選
- 各種説明板
取材日:2017/08/19
コメントをお書きください