
【ながれかんじょう】
【習俗】

十九厄まけ初産ではてた 洗ひ晒しで浮かばれぬ
仏教における死者儀礼の一つ。
まず「灌頂」とは頭頂に水を注ぐことであり、転じて墓参りの際、墓石の上から柄杓で水を流す法要を指す。
これを踏まえて流れ灌頂とは、産婦が難産で死亡した時に小川の端に卒塔婆や竹を4本立てて赤い布を貼って柄杓を添え、また故人が持っていた道具などを吊るし、これに水をかけて供養するという風習。
水をかけるのは親族縁者だけでなく通り掛かった通行人にも供養に参加してもらう。
布が赤から白色になれば死人が成仏したという。
十九厄まけ初産ではてた 洗ひ晒しで浮かばれぬ
灌頂の法要には他にも種類があり、流れ灌頂はその一つとして見るべきか。
流れ灌頂
— 鳥居 (@shinmeitorii1) June 4, 2022
お産で亡くなった産婦を弔う装置。橋のたもとなどに置き、道行く人に水をかけてもらう。晒には卍や南無阿弥陀仏など書かれ、文字が消えたり晒が破れたら成仏できるとされた。 pic.twitter.com/e7SkAO7Cok
文化7年(1810)3月26日。
西福寺にて、仏教儀式のひとつ、流れ灌頂(カンジョウ)の儀を見る。
水の中や水のほとりに卒塔婆を立て、経文を書いた旗をこれに掛け、シキミ(樒)の葉などを供えてまた旗に水を注いで無縁の亡者を供養する。
《菅江真澄著・男鹿の春風》
現在ではほぼ見る事のない風習だが、過去に一度だけこの行事に携わったというとあるお寺の関係者の方からお話を聞くことができた。
先代住職が水子の供養を行うにあたり、供養に適した川を勘で決めて従来の作法とは違うが卒塔婆を川に立てて法要を行ったという。
その際「ケガレ」があるとして、なるべく住職以外の人間には近づけさせず目に触れさせないようにした。
なおこの法要を流れ灌頂ではなく「流れ般若」と呼んだ、との事だった。
流れ灌頂という供養は、母子共に出産での死の確率が現代より遥かに高かった時代では何よりの供養だったのではないだろうか。
INFORMATION
◆参考文献
- 菅江真澄遊覧記第5巻/菅江真澄 内田武志・宮本常一翻訳
- 国立国会図書館デジタルコレクション
- 各種説明板
最終更新:2025/08/23
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